~獣医師が解説する原因、症状、予防まで~
桜が散り始め、春らしい季節になってきました。
しかし、季節の変わり目は寒暖差が激しく、私たち人間だけでなく、動物たちも体調を崩しやすくなります。
今週は急に気温が下がりましたので、デグーさんの体調にも気をつけてあげましょう。
今回は、デグーの「鼓張症(こちょうしょう)」について、獣医師の視点から詳しく解説していきます。
鼓張症(こちょうしょう)とは?
鼓張症とは、胃や腸内にガスが異常にたまり、お腹が膨らんでしまう状態を指します。
放置すると呼吸困難やショック症状を引き起こし、命に関わることもあるため、早めの対処が必要です。
鼓張症の主な原因
デグーの鼓張症は、さまざまな要因で引き起こされます。獣医師として、特に以下の原因には注意が必要です。
鼻炎や呼吸器の病気
鼻炎があると鼻詰まりが起こり、鼻呼吸ができずに口で呼吸するようになってしまいます。
その結果、呼吸の際に空気を消化管に飲み込んでしまい、鼓張症の原因となることがあります。
鼻炎の要因として、鼻の中に骨の塊ができる疾患や歯のトラブルなどが挙げられます。
また、体調が弱ると、ハウスダストや細菌感染が鼻炎症状を悪化させることもありますので、飼育環境を清潔に保つことも重要です。
鼓張症の主な症状
鼓張症は早期発見がとても大切です。以下のような症状が見られたら、すぐに対処しましょう。
- お腹が異常に膨らんでいる
- 食欲がなく、餌を食べない
- 元気がなく、じっとして動かない
- 呼吸が浅く、速い
- 口を開けて呼吸している
正常な状態と鼓張症のレントゲン比較
鼓腸症はレントゲン検査で診断をします。
左は正常なレントゲンです。
右は左と違い、黒い領域が身体の中に多く見られます。空気は黒く映るため、かなりの空気を飲み込んでしまっていることがわかります。
鼓張症の治療方法
多くの場合、「鼻詰まりによって呼吸がうまくできず、空気を飲み込んでしまう」ことが発端となっています。
そのため、以下のような治療が行われます。
原因に応じた治療
鼻炎や呼吸器疾患が原因の場合 → 鼻炎の治療(抗生剤や消炎剤など)、原因物質の除去
症状を和らげる治療
消化を助ける薬や、ガスを排出しやすくする薬の投与
点滴や酸素室でのケア(重症の場合)
治療は早めの対応が鍵です。
「いつもと様子が違うな?」と感じたら、すぐに動物病院に相談しましょう。
鼓張症を防ぐためのポイント
鼓張症は急激に症状が進行することもあるため、日頃から体調の変化に気を配ることが大切です。
特に次のような点に注意しましょう。
鼻の症状に注意する
デグーは基本的に鼻呼吸をする動物です。呼吸器に異常が生じると、食欲低下や鼓張症のリスクが高まります。
- 鼻水が出ている
- 鼻をしきりにこする
- くしゃみを頻繁にしている
こうした症状が見られた場合は、早めに動物病院を受診することをおすすめします。
便の変化をチェックする
便の様子から異変による食欲低下などの不調を早期に察知できます。
次のような変化が3日以上続く場合は注意しましょう。
- 便が小さくなったり、形が不揃いになる
- 便の量が減る
体重の変化を確認する
デグーなど草食動物の体重は日々の生活で大きくは変わりません。明らかな体重の変化がある場合は不調があると考えたほうが良いでしょう。
- 定期的に体重を測定し、変化に気づけるようにしましょう
- 体重が明らかに減少したり、逆に増加した場合も注意が必要です
飼い主さまができるケア
デグーはとても繊細な小動物です。飼い主さまの日頃のケアが、健康を守るうえで大切な役割を果たします。
日々の健康チェック
- 体重の増減やお腹の張りを確認しましょう(普段から体重を測定する習慣をつけると、異変に気づきやすくなります)
- 食欲や便の状態をこまめに観察しましょう
異変を感じたら早めに受診を
いつもと違う様子に気づいたら、できるだけ早く動物病院にご相談ください。
まとめ
デグーの鼓張症は、早期発見と適切なケアがあれば防ぐことができます。
以下のポイントを意識して、おうちのデグーさんの健康を守りましょう。
呼吸器の健康に注意し、鼻炎を見逃さない
日々の観察が健康維持の鍵!
飼い主さまの愛情とケアが、デグーさんの健康を守る一番のポイントです。
些細な変化にも気づけるよう、日々の様子をよく観察してあげましょう。
また、異変に気付くためには「定期的な体重測定」がとても大切です。
小さな体調の変化を見逃さず、病気の予防や早期治療につなげていきましょう。
デグーさんと過ごす毎日が、健やかで楽しいものになりますように。